中学受験の国語の試験では必ず物語文が出題されます。毎年たくさんの本が出版されますが、なかには多くの学校で出題されている作品もあります。
中学受験の国語は、文章を読むのに時間がかかりますが、一度でも読んだことのある本や作家の文章であれば、はじめて読むよりも圧倒的に読みやすく、点数もとりやすいのは間違いありません。
この記事では、中学受験でよく出題されている本を10冊紹介します。もしも本を読むのであれば、中学受験にも役立つような本を読んでみましょう!
実は、中学受験は国語ではなく、「社会」の出来で合否が決まります!
そのため、第一志望に合格したいのであれば、社会を家庭学習でまず最初に固めることが断トツの近道です!
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せっかく読書をするなら中学受験でよく出る本を読もう
読解力をつけるためには読書をすることが良いと言われます。しかし、受験生は日々の宿題で忙しく、なかなか読書する余裕がありません。
そこで、読書のために時間を割こうとせず、学校の読書時間や塾での待ち時間など、少しの時間を活用して読書を取り入れてみましょう。せっかく読むなら受験でよく出題される文章を読むことをおすすめします。
その理由としては以下のようなことがあります。
小学生にとって共感しやすいものが多い
中学受験で出題される文章でも、特に物語文は学校や家庭が舞台のものや、主人公が小学生や中学生のものが多く、小学生にとって読みやすく共感できるものが多いです。
面白がって読むことができたり、楽しんで読むことができたりすれば、他の本を読んでみたいと思うきっかけにもなります。
志望校選びの一助になる
どの学校も中学受験の問題で出題する文章には学校からのメッセージが込められています。
家族の話や、学校を舞台にした青春の話など、合格して中学に入学してどのような学生生活を送ってほしいかということが選ばれた文章には込められているのです。
読んで共感できる作品を出題する学校は、相性のいい学校であり、楽しく通える学校と考えることもできます。
良質な文章が多い
中学受験で出題している作品は本屋大賞や講談社児童文学賞など、様々な文学賞で受賞作品に選ばれているものが多いです。
大人が読んでも楽しめるような文章が多く、良質な文章に触れることができます。
せっかく文章を読むなら、美しい情景の思い浮かぶような文章や、深く考えさせられるような文章に触れる機会を設けるのが良いでしょう。
受験で出題されたときすでに本の内容を知っていて有利になる
中学受験でよく出題される文章は、複数年にわたって様々な学校で出題されます。塾の授業でも教材に掲載されていることも多く、塾の授業や模試、入試本番で受験生が「このお話読んだことがある」という経験をすることは少なくありません。
すでに読んだことのある文章が出てくることで内容が理解できていること、落ち着いて問題に取り組むことができます。
世の中にある本の冊数を考えると確率は決して高いものではないですが、ときには過去に読書した経験や、熱心に問題に取り組んだ経験が生きることがあるのです。
「受験でよく出る本だから」と保護者が渡すのはNG
矛盾しているように思われるかもしれないですが、保護者が「受験によく出る本だから読みなさい」と渡すのは厳禁です。
せっかくの息抜きや勉強から離れてのリラックスタイムですから、子どもたちにも受験のために読書をしているという気持ちを持つと読書を楽しむことができません。
「受験のための読書」という気持ちが芽生えてしまうと斜め読みしてしまうこともあります。これから紹介する本については、子どもたちが何を読むか迷ったときに選択肢として提示することを心がけます。もしも子どもたちが読みたいと思う本がある場合には、それを優先しましょう。
中学受験生におすすめしたい物語10選
この10年間で中学受験で出題された文章を中心に、受験生にぜひ読んでもらいたい本を10冊紹介します。もちろんすべてを読む必要はありません。興味のあるものがあればぜひ手に取ってみてください。
「十四歳日和」水野瑠見
同じ中学校に通う4人がそれぞれ主人公になっている、14歳の1年をみずみずしく描いたオムニバスです。4章に分かれているので読書にあまり時間のさけない受験生でも読み進めやすい構成になっています。それぞれの主人公の心の動きの表現がとても上手で、文章を通して筆者の伝えたいことも伝わってきやすいです。
2018年に59回講談社児童文学賞を受賞している作品でもあります。近年では、講談社児童文学賞を受賞すると中学受験で出題されやすくなる傾向があり、2020年度の中学入試で最も出題されています。数年間は入試問題で出題されるでしょう。
「つめたいよるに」江國香織
中学受験だけでなくセンター試験でも出題されたことのある、長年受験の物語文で選ばれている作品です。珠玉の短編集ともいわれている作品は、物語が短いので読みやすいのはもちろん、入試問題としても扱いやすい特徴があります。
中学受験では2009年頃をピークにして出題されることは減っていましたが、2014年に難関校で出題されたことをきっかけにまた出題されることが増えています。今後も長く中学受験でよく見かける文章となるでしょう。
「ペンギンは空を見上げる」八重野統摩
第34回坪田譲治文学賞を受賞した作品です。文章のジャンルとしてはミステリーに属していて、中学受験ではなかなか見かけないジャンルの作品です。しかし、文章が美しく題材が中学受験向けであるためによく出題されています。
作品としては、ロケットの開発者になる夢を持つ小学校6年生の男の子が成長していく姿を描いています。物語の終盤以降に主人公の真実にかかわる描写があり、そこから話の雰囲気が一転し、子どもが読むべきか判断に迷う保護者もいるかもしれません。
しかし、物語全体には中学受験国語で大切にされるエッセンスが豊富にあり、後半の仕掛けに気付くことができない年齢でも十分に読み深めることができる作品です。
「小学五年生」重松清
17編からなる短編小説で、出題しやすい文章の長さと内容の秀逸さから何度も様々な学校で出題されている作品です。重松清作品は中学受験でどの作品も頻出作品ではあり、保護者であれば1冊は読ませておきたいと思うでしょう。この作品であれば1話あたり30分あれば読むことができるので、寝る前や学校の朝読書の時間などすき間時間を活用して読みやすいです。
作品のタイトル通り、小学校5年生の子が主人公の物語で、受験生の子どもたちにとってもリアルに感じられる内容が多く描かれています。日常によく出てくるシーンにありながらなかなか子どもたちが言葉にすることができない気持ちや考え方を筆者が見事に言葉で表現しています。受験に出題される文章だから、というだけでなく読むことで子どもたちの成長を促せたり、うまく消化できない気持ちを昇華させてくれたりする作品です。
「ぼくのとなりにきみ」小嶋陽太郎
朝日中高生新聞で連載していた作品です。主人公が中学一年生の「サク」という少年で、サクの一人称で物語が進むので感情移入をしやすく読み進めやすいので文章を読むのが苦手な子でも読み進めやすい作品になっています。
文章がシンプルで展開もわかりやすく安心して読むことができる作品ですが、伏線が多く、最後にはしっかりと回収され読みごたえも十分です。登場人物が皆しっかりとキャラクター設定がされていて寄り添いやすいですし、描かれているテーマも青春や妹や父親との家族の関係、中学校生活と、どれも中学受験で扱いやすい内容です。入試問題として今後しばらく出題されることが予想される作品です。
「蜜蜂と遠雷」恩田陸
映画化されたことでも知られている作品です。直木賞と本屋大賞のダブル受賞をしています。国際ピアノコンクールを舞台にした作品で、世界を目指す4人のピアニストたちの葛藤や挑戦を通して成長していく様子が描かれた青春小説です。映画にもなっているので読書後に家族で映画を鑑賞しても楽しめるでしょう。
恩田陸の作品は他にも「夜のピクニック」や「チョコレートコスモス」といった作品も中学受験で出題されている作品です。2018年のダブル受賞以降、他の作品も再注目されており、今後様々な作品が再び出題されることが予想されています。
「クラスメイツ」森絵都
2015年に刊行された作品で、中学受験でよく取り上げられている作品です。口語文と体言止めのバランスが絶妙で、リズムよく読み進めることができます。登場人物の書き分けが秀逸で、読みながら内容が頭にしっかり入りやすく、人物の心情も理解できるので、日頃文章を読むことが苦手な子でも読み進めやすいでしょう。
森絵都の作品も中学受験で多く取り上げられており「カラフル」や「アーモンド入りチョコレートのワルツ」「みかづき」といった作品も頻出作品です。映画化されている作品もあるので、読書後に映画を観て楽しむこともできます。
「あと少し、もう少し」瀬尾まいこ
中学校の陸上部を舞台にした物語です。名物顧問が異動となってしまい、代わりを務めることになったのは頼りのない美術教師。中学最後の駅伝大会に向けてメンバーを集めて練習を始めるものの、集まったメンバーは寄せ集めで不安要素が強い子ばかり。タイトルの通り「あと少し、あと少し、みんなと走っていたい」という強い気持ちが伝わる作品です。
瀬尾まいこの作品も中学受験では多く取り扱われています。心理表現が巧みでセリフの中にも人間味があふれている作風が特徴です。ストーリー展開もテンポがよく、最後には畳みかけるように情景が変化したり、心情や移り変わっていったりするところは圧巻で、子どもたちも一気に引き込まれるでしょう。「幸福な食卓」も頻出作品なので合わせて読むことをおすすめします。
「リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ」こまつあやこ
不思議な呪文のようなタイトルが目を引く作品です。タイトルはマレーシア語で、物語もマレーシアからの帰国子女の女の子が主人公です。中学2年生の途中で日本の学校に編入し、重農仕様ともがく様子や、短歌に出会ったことで成長していく様子が描かれています。
2017年に講談社児童文学新人賞を受賞した作品であり、2019年の中学受験では最も出題されています。児童文学であり、全編で188ページと長すぎず読みやすい長さです。短歌という日本文化に触れている点でも、今後長く受験で出題されることが予想されます。
「博士の愛した数式」
2004年に読売文学賞と本屋大賞を受賞したベストセラーです。2006年には映画化されています。80分しか記憶が持たない数学博士と家政婦の母子との交流を描いています。
文学的な作品が特徴で、わかりにくい心理描写があるわけではないですが、少し遠回りな文章が目立ちます。文章を読み慣れていない子や国語が苦手な子にとっては苦手意識を感じることがあるかもしれません。しかし、その反面本格的な国語力を求められる文章であるために国語が難しいと定評のある難関校でよく出題されています。初見ですぐに理解するのが難しい作品だからこそ、事前に読んでおいてどのような作品であるのかを知っていると試験本番で有利になるでしょう。
大切なのは何をどう読むのか
中学受験でよく出題される文章は良質で子どもたちにとっても影響を与えるような文章が豊富にあります。しかし読んだからといって誰もが感銘を受けるわけではありません。作者の書いている文章を理解することができなければ感想も浮かばないですし、知識や共用にもならないです。読んだからといってすぐに読解力や想像力がつくものではなく、読んで感想を述べたり、意見を交換したりする経験によって身についていきます。
できれば保護者も読んで感想を話す機会を設ける
可能であれば保護者も同じ本を読んでみましょう。中学受験の国語ではどのような文章が出題されているのかを知ることができますし、子どもたちが文章をどのように理解したのか、どう感じたのか、といった感想を述べあうことでコミュニケーションを取る時間も作ることができます。
話すことによって子どもたちも「そういう視点があるのか」「そんな感想もあるのか」といった発見があり、文章を読み解くヒントを得ることができます。これは実際の文章題を解くときにとても役立つ力になるものです。
子どもたちもただ読むのではなく、読んだ後に感想を話す場があると、より一層物語に集中して読もうと思えます。忙しい中で読書の時間を作ることは保護者にとっても簡単なことではありませ。
しかし、子どもたちの中学受験の勉強の中でも協力できる数少ないことの一つであり、塾ではなかなかできないことだからこそ、ぜひ取り組んでみてください。子どもたちにとっても受験期の思い出として「お父さんやお母さんと同じ本を読んで感想を述べたことが楽しかった、ためになった」と記憶に残ることでしょう。
大人が読む際にはなぜ中学受験で出題されるのか考えてみる
中学受験で出題されている物語文はどれも読みやすく、多感な年頃である子どもたちへのメッセージが込められています。大人が読んでも面白いものが多いですが、せっかく読むなら以下のことに気を付けて読んでおくと、子どもたちと感想を話すときの参考になりますし、日常での子供たちへの接し方も意識が変わります。
なぜこの本が出題されたのか考えてみる
前に述べた通り、出題された文章には学校側からのメッセージが込められています。そこで、読んだ後、なぜ学校側はこの本を出題文に選んだのかということを考えてみましょう。
教育方針や求めている生徒像、どのような学生生活を送ってほしいと思っているのか、など学校が考えていることを知るヒントになります。共感できれば、学校の教育方針と家庭の教育方針もあっているでしょうし、お子さんも合うタイプの学校と考えることができます。逆に読んでもピンとこない場合や、イメージができない場合にはあまり合っていないのかもしれません。
読んでみてどのような生徒像を求めているのかがイメージできない場合には、過去問を見て設問を見てみるのもおすすめです。設問を解いてみることで文章から読み取ってほしいものが理解できますし、どんな問題が出題されるのか知ったうえで子どもたちが過去問を取り組ませることができます。
子どもが読み取ることができるのか考えながら読む
子どもたちが読んだ感想として「良い話だった」「感動した」ということはあっても、具体的に誰の何に、ということを説明できるかというと答えられないことも多いです。また、読めているようで大切な部分が理解できていないということもあります。
読み終わった後、一緒に話の内容や感想を話し合う際には「どこが印象に残ったのか」「なぜそこに感動したのか」といった少し踏み込んだ部分についても話し合ってみましょう。聞いてみることで子どもたちが正しく理解できているのかどうか知ることができますし、理解できていない場合には解説することができます。
子どもが正しく読み取れていなかったとしても「間違えている」とか「ちゃんと読めていない」といった否定をするのはやめましょう。子どもたちの読むモチベーションが下がる原因となってしまいます。はっきりと否定するのではなく「こういうことなんじゃないかな?」とか「こういう見方もできるよ?」といった伝え方あをするようにすると子どもたちも意見が伝えやすく、他の本も楽しく読んで感想を伝えあえるようになります。
まとめ
ここまでで、中学受験でよく出題されている本を10冊紹介しました。読んですぐに国語の得点がアップするものではないですが、読むことで得られるものは豊富にあります。時間を上手に使い、ぜひ読む時間を設けて考えを深めるきっかけを作ってみましょう。親子で読むとさらに楽しみ方が広がります。
実は、中学受験は国語ではなく、「社会」の出来で合否が決まります!
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